代償行為を行わない過食症、むちゃ食い障害とは?
むちゃ食いした後に、嘔吐や絶食などの代償行為を行わない過食症です。
過食症とむちゃ食い障害の違いは何でしょうか。どちらも「短時間で大量に食べてしまう」という共通点がありますが、違うのは「代償行為を行うか、行わないか」という点です。
代償行為を行わないことによって、どのような症状があらわれるのでしょう。むちゃ食い障害特有の行動や治療法、判断基準をまとめて紹介します。
むちゃ食い障害とは?
むちゃ食い障害は、2000年ごろに「特定不能の摂食障害」としてアメリカ精神医学会によって認められます。過食症と違って、自己誘発性嘔吐や下痢・絶食・過度な運動などの「代償行為」を行いません。そのため、どうしてもカロリー過多になってしまうのです。
理想の体型に憧れる反面、食べてはいけないとわかっていながら、どうしても食べてしまう「むちゃ食い障害」。肥満になってしまうことが恐ろしく、肉体的にも精神的にも大きなストレスを抱えてしまいます。そのストレスから、さらに食べてまくってしまう…という悪循環に陥ってしまうのです。
むちゃ食い障害になると、糖尿病や高血圧など、大病にかかるリスクも高くなりますし、精神的ストレスからうつ病やひきこもり状態になってしまうことも。ひどい場合は、自殺に至る可能性もあります。
参考:みんなのメンタルヘルス(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/disease_detail/1_04_02eat.html
むちゃ食い障害の行動
-
食べ始めると止まらなくなる
一度食べ始めると、大量の食物を、短時間で一気に詰め込むように食べてしまうむちゃ食い障害。苦痛が生じるほど、満腹になるまで食べ続けてしまいます。
-
代償行為を行わない
むちゃ食い障害は、食べた後、嘔吐や絶食、下剤乱用などの代償行為を伴いません。そのため、体重が増え続けます。過食症と違って、なぜ代償行為がないのかはよくわかっていません。特定不能の摂食障害に分類されている「むちゃ食い障害」は、まだまだ解明されていない部分があります。
むちゃ食い障害の症状
-
肥満
むちゃ食い障害は、排出行為を伴わないため、体重が増加します。そのため肥満になりやすく、痛風や糖尿病などの生活習慣病、脂肪肝やガンといった多くの症状が併発する可能性が高くなります。
-
パーソナリティ障害
むちゃ食い障害になって、気付いたら精神的にも不健康になってしまっていたという方は少なくありません。「周りの人と違う自分」を認め、好きになることを困難に感じてしまう傾向があるようです。「自己否定」というネガティブな感情を忘れたいがために、アルコールや薬物に手を染めてしまうこともあります。
むちゃ食い障害の治療法
-
心理療法
2014年に、むちゃ食い障害には「認知行動療法」と「対人関係療法」が効果的であると報告されています。カウンセラーを通して、自分の感情や行動を振り返り、自己受容の大切さを体感的に理解していく治療法です。
-
減量プログラム
栄養指導を受けたり、無理なく、徐々に、理想的な体重まで減量する方法を学んだりします。心理療法とともに受けると、さらに効果的なようです。
-
薬物療法
食欲抑制薬「シブラトミン」や抗うつ薬の一種「選択的セロトニン再取込み阻害薬」などを処方されます。
むちゃ食い障害の判断基準
アメリカ精神医学会による「DSM-IV-TR(精神障害の分類と診断の手引き 第4版)」に、以下6項目が、むちゃ食い障害の基準であると記載されています。
- 限られた時間内・同じ環境のもとで、食べる量が他の人より明らかに多い
- 食べている間、食べるのをやめることができない
- 下の項目から、3つ以上該当する
- 早食いである
- 気持ちが悪くなるほど食べる
- 空腹じゃないのに、たくさん食べてしまう
- 食べることが恥ずかしく、一人で食べる
- 過食後、強い自己否定感を抱く
- むちゃ食いをしていることに精神的苦痛を感じる
- 週2日ペースで、6カ月以上、むちゃ食いが起こっている
- 代償行為を行うことはない
抑えられない過食衝動は低血糖症の疑いも…?
「心理療法を受けて、気持ち的には楽になったけれど、どうしても過食衝動が収まらない…。」という人がいます。
この時考えられるのが低血糖症です。低血糖症とは、インスリン分泌の異常で血糖値が正常値に落ち着かず、脳が栄養が足りないと誤解し「食べる必要がある!」と判断してしまう症状のこと。
脳からの命令なので、この時の過食衝動は強烈なもの。症状にあらがって過食を我慢するなんて、できなくて当たり前です。
この血糖値の異常に気づけず、「我慢できない自分が悪いんだ…」とまた心理的にもダメージを受けてしまう悪循環が生まれてしまいます。
もし、心理療法を受けてもなかなか過食衝動に改善が見られない場合は、一度低血糖症を疑ってみてもよいかもしれません。